絶版希少本 図録本 鏡鑑 泉屋博古館 写真解説
1990年
泉屋博古館
樋口隆康 編集・解説
72ページ
25.5x18.5x0.5cm
カラー口絵写真2点 ほかはモノクロ写真図版
※絶版
中国・朝鮮・日本の青銅鏡古鏡119面を収録。モノクロ写真・寸法・重量・時代?・詳細解説を付した図録本。
古鏡、和鏡、銅鏡、大変貴重な資料本。
【鏡鑑について より】
中国の鏡
中国の鏡は、商周の青銅器すなわち彝器と並んで、中国の青銅器を代?表する工芸品である。
鏡は姿見として、とくに自分の顔を見る道具として、婦人の化粧用具であった。しかし、物の姿を忠実に映し出すために、いろいろの効用が利用された。嘘、偽りのない真実は世の中の手本、鑑である。変装した怪け物の本体を見破ることができるとして、山に入る修行の道士が携行した。病人の病魔を退散させるものとして、呪術師が祈用に使った。謀叛人の本心を見破るものとして、秦の始皇帝は照譫鏡を宮殿にかかげた。いずれも、鏡が単なる姿見でなく、一種の呪物として使われたことを物語っている。中国や日本の鏡も、同じような用途に使われたのである。
中国で最も古い青銅の鏡は新石器時代?の末、黄河上流の斉家文化時代?のものといわれている。商代?の都、安陽の殷墟からも鏡が出土している。西周時代?にもあった。しかし、鏡が一般に普及し始めたのは東周時代?からである。ちょうど、商・西周時代?に盛行していた彝器が衰退しはじめ、それにとって代?るように、鏡が盛行した。以後、連綿として、明?清?の時代?まで、青銅鏡が作られたのである。
その間、一貫して、中国の鏡は鈕つきの鏡が主流をしめていた。ただ、背面の文様は、それぞれの時代?の思想を反映している。
中国鏡、とくに盛行した東周以後の鏡を大別して、春秋式鏡、戦国式鏡、前漢式鏡、後漢式鏡(六朝鏡はこれに含む)、隋唐?鏡、宋?以後の鏡と分類することができる。
春秋式鏡は10センチ以下の小型品で、厚くて、平直であり、文様には周銅器の怪獣文様を転用したものが多い。春秋時代?から戦国の前半まで行われた。
戦国式鏡は、薄手で平直であり、縁が立ち上って、匕縁、尖頂縁となり、鈕は小さな三稜鈕である。文様は羽状獣文や雷文や菱雲文を地文とし、その上に蛸龍文、蟠蛸文、鳳文などを配している。
戦国時代?後半から、前漢時代?前半まで行われた。
前漢式鏡は、厚手、平直となり、縁は更に厚く、平縁や連弧文縁が使われ、鈕は連峰形や半球形のものとなった。文様には、蟠竜文、爬龍文の変形したものや、草葉文などの植物文、方格規矩などの幾何学文も使われた。文様区を数個の圈帯に分けることも始まった。銘文を文様として入れたものもある。星雲鏡、草葉文鏡、池龍文鏡、異体字銘帯鏡(清?白鏡、明?光鏡、日光鏡を含む)などがある。
後漢式鏡は、平縁の外区と、一段薄い内区に分けられ、鏡面に少し反りがある。内行花文鏡、四神鏡、獣帯鏡、画像鏡、盤龍鏡、鳳鏡、獣首鏡、環状乳神獣鏡、重列神獣鏡などがあらわれ、とくに、神仙思想をあらわした四神文や神仙像、瑞獣などが用いられた。後半にはこれらの図像が半肉彫りで表現されるようになる。銘文も多く、とくに年号を附した紀年鏡が出現する。
六朝時代?の鏡は、後漢式の伝統をうけつぐもので、各種の神獣鏡、とくに画文帯神獣鏡、三角縁神獣鏡や、蓋鳳鏡、獣首鏡、盤龍鏡もある。魏、呉、西晋、東晋時代?の紀年鏡が多い。
隋唐?になって、新しい型式が生れた。白銅質の鋳上りの良いものが多く、文様には伝統的な神獣文、蟠龍文のほかに、瑞花、鳳凰、双鷽、神仙、故事、西方的な海獣葡萄文などが加わった。鏡体も円形の外に、八稜鏡、八花鏡、方鏡などがあり、鍍金、貼銀、金銀平脱、七宝などの各種技法が採用された。
宋?以後、鏡作りは衰退の傾向をたどる。鏡質も悪くなり、文様も、漢鏡や唐?鏡の模倣の域を出ない。ただ湖州鏡は素文ではあるが独特の風格をもっている。
朝鮮の鏡
朝鮮では青銅器時代?(中国の東周時代?に相当)に、多鈕細文鏡が盛行した。これは中国鏡の伝統とは異なり、北方系青銅器文化の流れをくむものである。
楽浪郡時代?に、漢鏡がさかんに輸入されたが、一部に行われただけで、青銅鏡は三国時代?、新羅統一時代?を通じて、あまり普及しながた。むしろ、高麗時代?になって、一時鏡作りが盛となる。
しかし、これは宋?・遼・金代?の鏡の模倣の域を出ず、鏡質も良くない。
日本の鏡
弥生時代?後半から古墳時代?にかけて、中国鏡が大量に輸入された。これらの前漢鏡、後漢鏡、六朝鏡は舶載鏡といわれている。
これを模倣して、日本でも弥生時代?後期から鏡が製作された。その形式は、中国鏡の図文を写したものが多いので、彷製鏡と呼ばれている。文様の本来の意味を理解しないで、形だけを写したために、異形化したものが多い。銘帯は各字形が図案化しているので、偽銘帯と呼ばれる。これとは別に縁に鈴をつけた鈴鏡は日本独特のものである。
奈良時代?には、唐?鏡の影響をうけた彷製鏡がつくられたが、平安時代?以降には、中国鏡の伝統から脱却して日本独自のスタイルを確立し、和鏡と呼ばれ、江戸?時代?まで行われた。
【掲載作品一部紹介】
画文帯環状乳神獣鏡
海獣葡萄鏡
透彫対鳳文鏡
羽状獣文鏡
羽状獣文地花菱文鏡
五山字文鏡
獣文地四鳳鏡
蟠文鏡
鳳雲文鏡
重圏文鏡
双圏蟠文鏡
連弧縁三鏡
方角四鏡
星雲鏡
草葉文鏡
連弧文清?白鏡
連弧文明?光鏡
単圏銘日光鏡
平素縁四神鏡
鍍金四神鏡片
流雲文縁四神鏡
流雲文縁方格規矩四神鏡
鍍金方格規矩鏡
唐?草文縁方格規矩渦文鏡
内行花文鏡
神人龍虎画像鏡
神仙禽獣画像鏡
四神文鏡
盤龍鏡
三角縁三神五獣鏡
三角縁神獣鏡
六神像鏡
六鈴獣形鏡
宝相華文八稜鏡
瑞花鴛鴦八稜鏡
ほか
★状態★
1990年のとても古い本です。