・Super-Takumar 50mm F1.4
・フロントキャップ(PENTAX)
・リアキャップ(PENTAX)
・F1.4の明るい標準レンズです。いわゆるアトムレンズのため生産から60年近く経過した現在は例外なく黄変が発生しています。さらに黄変を起こしているレンズが3枚あり、それらの厚さを合計するとF1.8のものよりも厚く、その分黄変の程度も強くなっています。そのため、カラーフィルターを装着した場合と同様にカメラのオートホワイトバランスでは多くの場合対応できないようです。
・黄変は、紫外線の照射により軽減することができるため、この方法で黄変を改善した個体も出回っているようです。今回出品した個体は過去にその処理を行ったことのないもののようで、入手当初はかなり強い黄変がありました。そこで、輝度が高めの紫外線を近距離から数日間照射して黄変をほぼ完全に除去しました。その前後に同一被写体を撮影した比較画像を商品写真中に置きましたのでご確認ください。長い年月が経過するとまた黄変の影響が出るようになると思いますが、しばらくは 8枚玉のSuper-Takumar 50mm F1.4前期型に劣らない、カラーバランスが良好な撮影結果が得られると思います。
・前玉,後玉とも表面に目立つ傷は見られませんが背後から強い光で照らすと、後玉表面に短めの擦り傷が数本見られます。
・内部のレンズも含めて外周部に小さな劣化部分は何か所か見られますが製造時からの経過年数を考えるときれいなレンズだと思います
・光学系全体の透明度が良好な個体で、実写例のようなクリアでカラーバランスの良い撮影結果が得られます。
・外観は黒色塗料の小さな剥げが所々見られますが、目立つ傷や変形部分はありません。詳細は前述のリンク先にある25.jpgでご確認ください。
・文字やマークの色はくっきりしていて見やすい状態です。
【可動部の状態】
・フォーカスリングは全周にわたって一定の手応えでスムーズに回転します。逆転時の遊びはなくピント合わせを正確にできます。ヘリコイドにラップ研磨処理を行ったため、回転時に指先にざらつきやトルクむらなどの違和感が伝わってくることはありません。
・絞り羽根に油の付着はなくきれいです。
・絞り羽根の動作はPENTAX SPボディに取り付けて確認しましたが,シャッターに連動して迅速に開閉しました。
・絞りリングはクリック感が良く、軽い力でスムーズに回転します。
・フォーカスリングおよび絞りリングの操作感は、多くの方に良好だと感じていただける状態に整備できていると思います。
【このレンズの特徴等】
・M42マウントのレンズです。
・レンズ以外の部品は総金属製であるため,コンパクトなレンズにもかかわらず手に持つとずっしりと重たく感じます。
・黄変を感じないクリアな撮影結果が得られ,F1.4では背景を大きくぼかしたふわとろ描写ができます。商品写真中にあるF1.4で撮影した実写例をご覧ください。
・F8くらいまで絞ると高画素数のデジタル一眼で撮影しても画面の隅々までシャープだと感じる解像度の高い画像を得ることができます。
・最短撮影距離は0.45mです。
・6群7枚構成の光学系です。
・商品写真または前述のリンク先にある実写例のようにきれいなゴーストや光条が撮影できます。
【分解整備の内容】
・内部のレンズ面に付着していたチリや汚れなどを可能な限り清掃しましたのできれいな状態になっていると思います。商品写真中のレンズ背後からライトで照らした画像をご確認ください。
・個々の部品に分解した際に水洗可能な部品はすべて洗剤による洗浄を行いました。表面に付着した汚れや不要な油分を除去しました。
・外装の黒色塗装に微細な剥げが所々見られましたので油性の黒色ペイントである程度補修しました。このペイントは水濡れには耐え簡単にはとれませんが,エタノール等の溶剤でこすると少しずつ色落ちします。汚れが付いた際は乾いた布か水で湿らせた布で拭く程度にしてください。
・フォーカスリングのヘリコイドに使用されていた古く汚れたグリスを除去し、ヘリコイドの溝の中までラップ研磨と呼ばれる方法で磨き上げ,溝の奥にたまった細かな汚れをほぼ完全に取り除きました。その後,粘度が適した新しいグリスをヘリコイドの中に隙間なく充填しました。
・入手当初は絞りリングの回転に粘り感があり重ためになっていました。原因は絞りリングとともに回転するマウント部内にあるリング状の部品に古い固化気味の油分が付着していることでした。そこで、その油分を洗浄除去しました。その結果、絞りリングの操作感が大幅に改善され軽い力でクリック感良好に回転するようになりました。
・PENTAX SPボディにマグニファイアを取り付けて確認しながら無限遠マークの中心で無限遠にピントが合うように調整しました。ミラーレス一眼にマウントアダプターを介して取り付けた場合は、そのマウントアダプターの設計や工作精度によって無限遠位置が異なりますが、オーバーインフの(無限遠マークのわずかに手前で無限遠にピントが合う)ものが多いと思います。マウントアダプターに取り付けて無限遠を精密に調整しても、その時使用したものでしか正確な無限遠が出ないためあまり意味がありません。そこで、フィルムカメラを基準にして調整しましたので、フィルムカメラで星や遠景の写真を撮影する場合に、フォーカスリングを∞位置に合わせただけでピントが合う状態になっています。
・無限遠調整は天体望遠鏡の接眼部に人工星を取り付けたコリメーターで高精度に行いました。